自分と最近生まれた息子との写真。
分不相応なグレッチと
とーちゃんそっくりな坊主。
写真だとわからないけれど
ギターはヘタクソだよ。
ヤツは10代の頃「カオルストーカー少年」だった。
専門学校の講師をしている時に出逢った。
午後の最後の授業が終わるとオレを待っている。
スライダーズやトムウエイツが好きで
いいヤツだが唄がヘタクソなので
早々にミュージシャンの道をあきらめ
稼業を継ぎ大工をやっている。
ゼロから家をつくるんだ。
すごくね?
レインハウスの新築1件家の制作を
2万円ぐらいで頼んでいる。
すると息子ベイビーはオレの孫弟子か?
4畳半一部屋の5階建て超細長いビルとか希望。
あ。
家建てる時オレもやる。
家全体を作品にしちゃえばいいんだ。
あ。
等身大の針金ロボット作りたい。
それとゆうべ新曲がほぼ完成した。
3バカで発表する予定だがわからん。
ユーチューブなどで発表はしない。
ライブにこない限りキミタチは聴く機会がない。
これから時代はCDなるモノを
「必要とするヒトが減る」と想う。
だいたい昨今はCDよりダウンロードじゃん。
それは加速するよ。
携帯とかiPodで音楽聴いているヒトを見かけるけど
本来録音された音源は「スピーカー/空気を振動させて」ってカンジで
つーかオレもiPod持ってるけれど
イヤフォンのあのヒドい音質でみんなよく平気だなと感心している。
外に音が漏れるぐらいの音量で聴いているヒトを
電車内でみかけるが難聴なのか知らんけど
あんな爆音じゃのーみそいかれるぞって
隣の席でうるさい野郎がいると
ブラックレインの冒頭のシーンで
「佐藤(松田優作)」がナイフでノドを切る場面の直前。
ものすごい形相で10秒後に死ぬ相手を睨む。
それをイメージしてとなりのイヤフォンバカを睨む。
パントマイムでオレは自分の耳を指差す。
しかとされた場合はつんつんして「音うるせーよ」と文句を言う。
フリーダウンロードは別だけれど
基本的にネットでダウンロードは
オレたちに「カネが1円も入らず
しかも法律違反」だからオレはやったコトないけどさ。
逮捕されちゃうかもよ。
ましてそれをヒトに送ったりしたら。
くしし。
新曲の歌詞のタイトル
「4月の確かいつかがオレのバースデイ」(仮)
実際にそれをひらめき
カタチに並べる詩を「書いている時間」は30分程度だけど
この歌詞の「ネタ集め」には48年かかった。
やっと「過去の作品にケリをつける唄」がかけた。
歌詞をここに載せようかは迷ってんだ。
erosのメンバーと千葉ルックサイトウヒロシと
塚本晃には送った。
音源を送ったヒトもいる。
とにかくそれが書けたらトニカクオレは最高で
世界の不思議なヒトたちの不思議でお下劣な
ヒトたちが特にネットの「顔の見えないヒト」が
人間ではなく「今しか見えない旧式のカラオケ」みたいに見える。
聴きたくないけれどヘタな唄と伴奏が聴こえてくるが
よく考えれば日々となりの住人の演歌を聴いているし
そのうち「聴こえなくなる」からほうっておく。
さてと。
このブログはオレが家賃を払いオレが管理している。
いわば「おれんち」だ。
オレは暴君だ。
この家の中ではレインはお妃様だけど
オレは暴君だ。
ネロとか金ナンチャラなんぞ小物。
だいたい。
メルマガなどはこちらが一方的に出すから
その内容は気をつけるけれど
このブログは。
オマエが
自分の意志で
勝手に読みにきたのだろ?
オレの家に勝手に来て
気に入らないモノがあると
壁に落書きしていくんだ。
それと同じことをやっていると
バカ野郎だから気がつかないのである。
オレの真の愛読者はオレ以外の文章は読みたくない。
まして今回の「しろ/ラメ/カオルコ」の文章は
センスゼロ。内容ゼロ。思いやりゼロ。
腐ったフレーズばかりで吐きそうになった。
このままではオレのいのちのキケンがアブアないので
キミタチの安い携帯からは書き込めないように設定しておいたから。
またHPのアドレスも迷惑メール指定をした。
よってキミタチとのコミュニケイションは永遠にない。
ライブに来るのはもちろん自由であるが
キミタチがこなくなってもオレは1ミリもどうでもいい。
この文章によって傷つこうが死のうが興味がない。
キミタチの下品な言葉を聞く耳はない。
まあいいや。
アホのために30行ぐらいムダにしてしまった。
今からオレの脳みそからキミタチの存在を削除します。
キミタチとは元々無関係でしたので「初期状態」に戻します。
偶然逢ったとしても話しかけないでね。うふ♡
貴女のことだいきらいでゴメンちゃい♡♡♡♡
チェックにしるし。
削除しますか? はい。
本当にしますか?はい。
削除が完了されました。
ブイーン。
先日のレイントカゲハンティングは絶好調。
いままでの記録が1日3匹だったが
今回は7匹。
ほとんどの日は手ぶらだ。
レインがトカゲを殺さないようにくわえて持ってくる。
オレの手のひらにトカゲを落とすと得意げに
「にゃま〜ン」と。
オレはえらいねとほめて別室へトカゲ君と移動。
水や野菜クズやレインのご飯など用意して
「レインのためにありがとう」とくつろいで頂く。
ドアを解放してあとは御自由にというカンジ。
その日は忙しくなんだか流しそうめんというか
レインが持ってくる。別室。
トカゲの尻尾は3段階に切れる。
ゲンタシン軟膏をキズにちょぽっとつけてる。
1匹やたら白いのがいてまた捕まってきた。
もしやと想い背中にピンクのリキテックスで印を付けた。
するとシッポが最後まで切れた状態でまたレインに。
「ねえ。 キミ今日3回目だよね。
もうシッポないからレッドカード」と
レインの行かない銭湯エリアの草むらへ逃がした。
こういう日々はけっこうしあわせだ。
ついでにコインランドリーで半年前の古いエロ本みて
あー エロっぽいオンナと やりてーなー と劣情したり
不意に腹が減ったり「人間の原始的な欲望」が
バラッドキング「相棒たちのバラッド」的に愛しくなる。
「はらへった。うまいもんくいてーな。
そんでゆっくり風呂入って
背中まで丁寧に洗ってちんげも整えて
清潔なベッドでいいオンナと
何度も何度も果てるまでやって
深く深くねむりてーな」
食欲 性欲 そして睡眠
まあこれはオレだけじゃなくておそらく
ほとんどのヒトがそれを「無意識にそれだけのため」に
暮らしているのだと想う。
そして「産業」がその「欲」を満たす「空間」を売る。
ところがほんとんどのヒトはそれについて
「考えたコトもないどころか
気がつきもしないで率先して
そのカモ/都市のエキストラ」をやっているように想える。
そうでなきゃ
こんな殺伐とした時代ではなくて
もっと豊かなコミュニケイションがとれていると考えるのが
オレにとっては自然だ。
オレは「ぜってーにオレはカモにはならん」と
小学生の石油パニックの時に強くひらがなで誓った。
生まれて気がついたら
ちょうどグランドの400メートルトラックを
走っていっているようなカンジだった。
みんな必死で走っている。
そのうちオレは気がつく。
「お。これグルグル回ってるだけじゃん。
意味なくね?」
だから当然スピードを落とす。
歩いたり座ったりもする。
だってよ。
意味もわかんないのに
必死でグルグルはおばかさんのするコトだからさ。
自分で暫定的な意味を見つけてから走りたい。
とか想ってたんだけどさ。
もうその400メートルトラックの
中から脱出して屋上からタバコを吸いながら
眺めていようと。
新曲が書けたらすっとそう想った。
オレはたまたま
まあちょっとしたコトがあって
一時的にこの世界にいるだけだからさ。
まあ頃合いを見て本来の場所に帰るけどね。
あー言いたいコトかいてスッキリしたー
ゆーべツカモトから電話でずっと
「とにかブログなんかやめろ」とか言ってんの。
ぜってーやめねーつーの。
それはさ。
名古屋で話しかけてくれた紳士的な青年が
「愉しみな数少ないブログと書き込んだ者です」と
本当にそのときは感激して絵本をプレゼントした。
そういう方と対面すると本当に
「ウンコメント」などどうでもよくなる。
オマエより名古屋の方が大事なんじゃ。
お。
そうだ。
ツカモトゆーべ言い忘れたけど
適当な時期にライブいっしょにやろうぜ。
ブッキングとかはオレがいいカンジになるように
石毛さんに言っといてね。
あと今度のサンバカ来なよ。
みんなスーパーウエルカムだぞ。
たまに石毛さんは来てくれんだ。
オレ石毛さん大好き。
そうだ。
レインのオヤツで
関西の時に
「銀のスプーン三ツ星グルメ/赤」をくれた方。
ベリーありがとう!
見るからに高級そうなヤツだったけれど
レインがすっごくすっごく夢中で食べてたよ。
ありがとうございます。
でも高級品というのは
なぜか量がちょこっとで
世間様はそうなのですよね。
そんなにお腹がすいてなかったと想うんだけど
すごいスピードで食べたよ。
次回のサンバカも13日の金曜日で
自発的に「なぜ不吉なのか」を調査した。
まず「キリストが十字架にかけられた日」というのは俗説で
正しくないらしい。
迷信の要素が強く
日本では「4/9」が「死/苦」と音が似ているので
忌み数字としてラッキー7より嫌われる傾向があり
それと同様で13とが不吉というコト。
この迷信は英語圏とドイツ/フランス。
ちなみにイタリアでは17日の金曜日
スペインでは13日の火曜日が不吉とされている。
またなぜかこの日には宝くじが売れるという統計がある。
本当に不吉なのか迷信なのか
科学的に病院でデータをとったヒトがいる。
つまり怪我人が多く運ばれるとか
死者が出るとか。
結果はあまり変化はなかったのだけれど
心理学者たちが別の意見を言い出した。
「患者の中には迷信を強く意識して
今夜死ぬだろうと自己暗示をかけてしまったり
逆に医者がこういう不吉な日だから慎重に」
そういったデータが欲しいと。
ほとんどウィキペディアの情報なので興味がある方はそちらを。
それにしても次回のサンバカが本当に愉しみだ。
ちょっと前のブログで「楽屋でおとなしく」とか
魔がさして書いたけれどやめた。
そんときの気分でいいカンジにみんながなれるように
オレもいっしょに楽しむ。
それとCDなどもし購入予定がある方がいらっしゃたら
事前にご連絡頂けるとカオルに喜ばれます。
なにしろサンバカでのカオルは神様だからな。
キッカケは忘れちゃったけれど
晃士がなんかで言い出したような気がする。
明日は新曲を練習しにスタジオへいこう。
雨が降っていなければだけれどね。
基本的にオレは「すき屋のポン酢おろし定食/柿の種/ラムネアイス/グミ」しか
食べていないけれど肌もつるつるだし
きっとエッチな女の子な舐めたくなっちゃうぐらいムダに肌が綺麗で
風呂にぜんぜんいかなくてもまだ禿げる気配がない。
健康食品とか栄養ドリンクとか
青汁とか単純にマズいんだよ。
ラムネアイス喰わないと眠れないんだよ。
86円で安いんだよ。
4回かじると1回ぐらいの割合で
「ラムネの粒」にあたるんだけど
そんときったらまあしあわせだね。
ほとんど毎晩食べてる。
でも絶対に1日1個しか食べてはいけないんだ。
それがレインハウスの血の掟。
レインハウス血の掟74 ラムネアイスは1日1個まで
ちなみに「掟14」は
「いましかできないコトをやれ」です。
チカゴロいちばん素敵な時間は
レインを抱きしめてレインに顔を埋めて
ピアノトリオのジャズを聴いている時。
渋々オレが生きている動機は
ただひとつ「レイン」だけだ。
たまにレインとフトンの中で
寒い朝は「ふかふかフトン旅行」に出かける。
ふたりで布団に潜り身を寄せあって
世界中のいろんなところへ
時代を超え旅をする。
レインはどこへいっても人気者だから
オレはまるで自分がほめられているように嬉しい。
今レインはオレの隣でごろごろしているよ。
朝ご飯たくさん食べて外で遊んで
うんこモリモリしていまはシエスタだってさ。
いい夢を。
レイン。
ブブブブイーン
新曲がかけてから
やりたいコトがたくさんでてきて
13のライブが終わると
オレは「100%」予定のない状態になれる。
誰にも邪魔されずにたくさんつくったり
運動したり行動したり実行できる。
ライブを一生やらないという選択肢もできる。
そういうのコトをゆっくり考えられる時間。
レインはともにいる。
そう想うと今回の騒動も「結果オーライ」に想える。
オレは物欲があまりないのだけれど
下記の3つが欲しい。
爪切り
みみかき
毛抜き
ただしいわゆる「一生もの」である。
例えばドイツヘンケル社製爪切りや
三代目菊五郎作唐瓶蝶仕様の毛抜きとか。
(ちなみにそんな製品ありません)
あとはオンナが欲しい夜もあるけどモノじゃないからさ。
遠い町のベイビー
乱れた夜を想い出す
オマエは知っているよな
オレがベッドでもタバコを吸うことを
はぐれちまったベイビー
まだオレの好きなゼリーを探しているのか?
それとも月へ帰ったか?
イヤリングかたっぽ忘れてんぞ
銀の腕輪のベイビー
オレより先に眠るなよ
朝飯はフルーツがいい
オレンジ チェーリー ラズベリー
濡れっぱなしのベイビー
もっとこっちへこいよ
時と場合によるけどさ
クチビルは奪うもんだぜ
2012 春 適当マシーン作
みんなもさ。
ひとつ家に適当マシーンがあるとラクチンだぞ。
操作も簡単。
今の詩もさ。
上のふた開けて吸い殻と
ラムネアイスの袋と棒と
書き損じた絵や詩の紙を入れて
赤いボタン押すと
さっきの詩がパソコンに送られてくるんだ。
ゴミも綺麗になるし資源も再利用だし。
エコですわ。
わたしったらエコですわ。
ねえ。
明智さん。
「エコ」ってなあに?
おいしいの?
かたいの?
冷たいの?
え?
明智さんも存じ上げていらっしゃらないのですか?
じゃあわたしのようなおバカさまにわかりっこないから
エコは無関係ってことでよろしゅうございますね。
ネコですわ。
わたしったらネコですわ。
タコですわ。
わたしったらタコですわ。
茹でるも
大空を飛ばせるもお好きに。
あなたったらうわの空
スローなブギにしてくれ
I want you お〜れのかたをー
だきしーめーてくれー
カッコいいタイトルだな。
ちょっと疲れたから
散歩してこよう。
飯喰ってくるかもしれないけど
すぐ帰えってくる 絡まってて
おお。
ナイス誤変換。
すぐ帰ってくるから待ってて
すぐかえってくるからまってて
デジタルならではのアクシデント。
ただいま。
雨降ってきたから
タバコ屋でハゲオヤジと
四方山話して傘借りてきた。
ねえ。
みんな薄々感づいているかもだけど。
今回のブログはマラソンで
まだ半分も来てないぞ。
書くより読むのが早いだろうけれど
さっきレインが昼寝しててマダしてるけど
もうすぐ17時だ。
さて。
散歩中に浮かんだ「カオルワールド」を
いきなり小説でチャレンジ!!
スタート
クロシロ カオル
1 クロの場合
クロは有名な国立大学を卒業して有名な一部上場企業に入社したけれど3日で辞めた。入社式での社長の挨拶が気持ち悪くて吐きそうだった。形骸化されたコトバの羅列。下を向いて原稿棒読みしながら喋る社長。
「自由な柔軟性とオリジナリティのある発想力と営業力こそが現代社会ではもっとも重要だ」なんぞとおっしゃられてもな。発想力ってなんだ?自由な柔軟性?
2日目に上司から長めの髪を「切ってこいと」命令された時は殴るのを我慢することで精一杯だった。上司の小言よりも「我慢」をしている自分が嫌だった。歓迎会は最悪だった。なんでみんなカラオケなんか唄うんだろう?ヘタクソな唄になんでみんな拍手をするんだろう?オレはそれが苦手で学生時代にコンパなんかを拒否し続けたのに。だいたいオレは酒が嫌いだ。それを飲んで乱痴気している酔っぱらいをみるとマシンガンを乱射したくなる。
「ねえ。クロちゃんだっけ?かっこいいよね。新人君の中でダントツ的な。
ねえ〜なんか唄ってよもしかして照れちゃってる?緊張しないでモリアガロウよ〜」
クロはタバコのけむりを戯れつく先輩OLの顔に吹きかけることでそれを拒否した。
3日目。朝の満員電車でクロは途中下車した。
「こんな電車にずっと乗り続けるなんて冗談じゃない。どうしてみんなこんな状況にじっと耐えているんだ?
耐えたその先になにがあるんだ?知らないヤツの体臭。体温。強制収容所へ向かう囚人より最悪だぜ。
あいつらには死が保証されてる分だけマシだ。そして乗るのは片道の1度だけ」
そのまま渋谷のミニシアターに行って4人目の犠牲者が悲鳴を上げたところでクロは席を立ちトイレでネクタイをゴミ箱に捨てた。ネクタイ?なんだこれは?クビが苦しい。ネクタイを発明したヤツはきっと変な性癖を持っているんだろうな。召使いをこき使い眩しすぎるシャンデリアの下でなんだっけ?ほら。鳥の脂肪肝。フォアグラ?とにかくそんな気持ち悪いものを食べてはしゃぐんだ。
クロは5時なると駅前で立ち喰いそばを食べて家に帰った。
クロはイライラしていた。
いや。
ものすごくイライラしていた。
両親は嘆いた。考え直してくれないか。オトナには我慢が必要なんだ。もう社会人なんだから。クロは我が一族の自慢なんだよ。まだ慣れてないだけだよ。せめて半年働いてから決めてもいいんじゃないのか?どんなにお父さんが苦労をしてオマエを大学に。クロはうつむきながら笑っていた。
自慢?オトナには我慢?ずっとこの調子だった。茶番は終わりだ。クロはバイトを探してこの家を出ようと誓いながら濃すぎるトコーヒーを飲み干した。「一晩じっくりと考えてみるよ」とクロが嘘を言うと両親は少し安心した表情になった。
その夜にクロは荷物をまとめた。
いざ出て行くとなると本当に必要なモノってけっこう少ないんだな。迷ったけれど携帯電話と大学時代の唯一のトモダチのCDは持っていくことにした。ゲシュタポはいいバンドだ。唄はヘタだけど歌詞がいい。リズムもよかった。ゲシュタポはいまライブハウスでけっこう人気のバンドだ。落ち着いたらライブにいこう。また楽屋でハッパでもキメて。ジェルはえらい。就職なんかしないで髪も切らずにバンドを続けている。だいたいバンドの邪魔だってすぐ大学やめたもんな。かっこいいけどジェルがいない大学はオレにとって清潔なスラムだったよ。単位に必要な授業だけやってあとはジェルがそのままにしていった音楽サークルの部室の裏の大麻の世話。それと風俗のティッシュ配りのバイト。退屈だった。死んでるのと大差ない。意味もなくストレッチばかりしてたな。ジェルにはバンドがあった。でもオレには「やりたいこと」がなかった。大学に通っているうちに見つかるだろうと想っていたけれどダメだった。だからオレは「ついでに」面接を受けたんだ。そしたら採用された。なんの会社かよく知りもしないでさ。もうくだらないからやめたけど。
でも少しわかった。やりたいことはわからないけれど「やりたくないこと」はわかった。
それはネクタイを締めることと大麻の栽培。むいてない。すぐに枯らしちゃうんだ。
クロは荷造りが終わると両親の現金や売れそうな貴金属を持って猫にキスをして夜明け前に家を出た。
2 シロの場合
シロはプロのバレリーナを目指していた。すべての「裏側」を見透かしてしまいそうなおおきな瞳。
手足は細く長くどんな指輪でも似合いそうな白い指。街を歩いていてオトコに声をかけられない日はなかった。女性を賛辞するコトバがすべてあてはまるような「外見」。でもシロは「踊ること」以外に興味はなかった。
ひたすらプロのバレリーナを目指していた。踊るのは本当に楽しかったしバレーにかかわっている時だけは
「生きているカンジ」がした。
ある時「次回の舞台の主役を決めるオーディション」があった。シロは懸命に練習をした。
コーチと一緒に鏡を見ながら何度なんども踊った。生活のすべてはそのオーディションのためで特に父親は娘の成功のためにすべてのエネルギーを注いだ。ちいさな世界ではあるけれどシロを「次期スター」として応援するヒトたちも増えていった。
当日は念入りにカラダを洗い髪を整えた。パパがくれたリンスの匂いを嗅ぐとうまくいきそうな気分になった。化粧は控え室でコーチのつれてきたホモセクシャルのプロがやってくれた。本番ではイメージ通りに気持ちよく踊れた。コーチも親指を立てて微笑んでいた。最終選考のふたりまでシロは残ったが選ばれなかった。理由は「胸が大きすぎるから」だった。シロはなにかとても薄汚いぬめぬめしたモノを投げつけられた気分になった。貧乏臭いお金持ちが食べ切れないのに注文した肉料理の脂身のようなものを。コーチは審査員たちに抗議をしていたけれどシロは衣装のままタクシーで帰った。
運転手はミラー越しにシロをチラチラと見た。
「バレーのヒトですか。いや。ほんと。お綺麗ですね。すいません。じろじろ見ちゃって。
こんな綺麗な女性初めてで。お世辞じゃないっすよ。いや。ほんとに。いや。あの。プリマドンナですか?
あの。変な意味じゃなくて。あの。素晴らしいバストですね。Fカップですかね。
あの、ほんとにいやらしい意味じゃなくて。ほんと。見事ですよ。芸術品みたいな曲線美ですねえ」
ラジオではなにかスポーツの番組が流れている。
とても大事な試合のようでアナウンサーが興奮気味に喋っている。
勝った方がおおきな大会に出場できるらしい。
「こんど公演があったらわたし行きますよ。いや。社交辞令じゃなくて。あの。名刺を渡してもいいですか?
ぜひ舞台の時は声かけて下さい。けっこう時間に融通が利く商売なんで。それにしてもいい匂いですね。
なんという香水ですか?」
シロは「汗の匂い」と答えながら自分の奥の方でなにかが破裂するような爆音を聞いた。
シロは踊るのをやめて家に閉じこもる日々が続いた。なにも考えられなかったし考えたくもなかった。シャワーも浴びずに涙も出なかった。シロはただ乾いていた。遠いサバンナのようにただひたすらに乾いていた。砂漠のようなベッドの中で眠り砂漠のような夢を見ていた。食欲もなかったけれどパパが用意してくれたモノだけは食べた。「食べ切れなかったら残してもいいからね」とシロの好きなジャムとパンとヨーグルトをベットの脇にそっと置いてくれた。
ママがグレープフルーツを持ってきた時は気が狂いそうになった。なにこれ?まるでFカップのブラジャー。ご丁寧にふたつに切って並べている。ママの胸の方がもっと大きいけれど。シロは久しぶりのシャンプーをしながら想った。砂漠で踊ったらきっと砂に沈んでしまう。砂漠で必要なのはタフなジープでトゥーシューズは役立たず。でも砂嵐の中だったらきっと上手にやれる。そしてたくさんの砂男たちがアンコールの拍手をしてくれる。そうだ。あの運転手に謝らなきゃ。アレは汗の匂いじゃなくてこのリンスの匂いだわ。わたしは嘘をつきました。そして名刺は領収書と一緒に道路に捨ててしまいました。ゴメンナサイ。
ある日パパとママが「気晴らしに旅行でも行こう」と誘ってくれたがシロは断った。ママは「予約した旅館がもったいない」と言いパパは「せっかくだから色々ひとりで考えるといい」と大きな外車でふたりで旅行に行った。2日後に電話が鳴った。シロはなんとなく予感がしていたから驚かなかった。警察のヒトはまるで自分の責任であるかのように「ご両親が高速道路で事故に巻き込まれお亡くなりになりました」と申し訳なさそうに話した。葬式をはじめすべての事後処理はパパの弁護士がやってくれた。シロには「人生5回分ぐらいの遺産」が残された。
3 ヘルメット/3万円/警備会社
クロはいま中堅の警備会社で働いている。風呂は会社で入れるから近所に風呂なしの安いアパートを借りて住んでいる。「有名大学卒業のカタガキ」がこんなに世間では有効だったのかとクロは家出をしてからやっと気がつき「その意味においてだけ」両親に感謝した。
実家を離れてすぐにちいさな町工場で働いた。「住み込み可」というのが気に入って選んだ。東北大震災特需でかなり人手が足りなかったようでその日から履歴書も面接もなしで働いた。仕事自体は単純な流れ作業だったけれどクロには不満がなかった。でもすぐにやめた。理由はふたつ。ひとつは昼休みだった。社長は「社員は家族」という考えだったので食堂でみんなで食事をした。午後の仕事が始まるまでトイレ以外は食堂から出ないことが暗黙の了解だった。苦痛だった。そんな法律でもあるように必ずテレビは「笑っていいとも」だ。芸能人やバラエティにまったく興味がないクロにとっては本当に苦痛だった。柔らかい拷問。社長の苦労話もパートのおばさんたちの世間話も嫌だった。午後になると必ずパートのおばさんの誰かがクロに耳打ちをする。「クロちゃん。あの正面のヒト浅野さんっていうんだけどね。あのヒトはあることないこと大げさに言うから気をつけた方がいいよ」。しばらくすると浅野さんが同じようなことを小声でささやいてくる。ひょっとして工場だからとクロはトイレにいくフリをして倉庫でマシンガンを探したけれど見つからなかった。
夜中にノックがした。工場長だった。ひどく酔っていた。勝手に上がり込みクロのことをやたらと誉めだした。「仕事の覚えもいいし若いし体力もある。なにかスポーツをやっていたのかな?贅肉がないねえ。
目が鋭いねえ。三日月みたいだねえ。がっこのときはモテただろ?ん?なんだかいいニオイがするねえ。
香水かな?」そんなことを言いながら工場長は突然抱きついてきた。
「ボクはね。クロ君が好きなんだよ。部下としても男性としてもね。もっと楽して稼がせてあげるよ。
お小遣いもあげるから」とキスをしてきた。クロは「じゃあ服を脱ぎますからちょっと」と立ち上がった。
恥ずかしいので後を向いて欲しいと言いうと工場長は素直に従った。クロは作業用のヘルメットで工場長のアタマを全力で殴った。3回思い切り黄色いヘルメットでアタマを殴った。「元工場長という生臭いガラクタ」のポケットからカネを盗ろうと手を入れて財布を捜したがなかった。かわりに封筒があって3万円入っていた。クロはそのお金を「自分を買うための費用」だと判断した。
クロはそのまま工場を出て行った。ファミリーレストランで夜を明かした。ハンバーグステーキを食べながら涙が出てきた。情けない。自分が「ホモの相手」に選ばれたことも悲しかったけれど自分の値段が3万円だったことが悲しかった。今夜中にこのカネを使い切ってしまいたい。
クロはまた教訓を得た。
他者との会話や接触が好きじゃない。
自分はオトコと抱き合う趣味はない。
ヘルメットで思い切りヒトの頭部を殴るとその相手は死亡する。
ファミリーレストランで3万円はひとりじゃ使い切れない。
工場長が死亡して「当日の夜いなくなった若い男性が事件に関与している可能性が高いと警察が捜索中」というニュースはそば屋のスポーツ新聞で読んだ。履歴書は出していない。指紋は残っているだろうがオレは過去に警察に指紋を採られたことはない。まず大丈夫だろうけれど用心しなきゃだな。
クロは身なりを整えて警備会社に面接に行った。数日後に携帯が鳴り採用された。クロは「夜勤」を希望した。会社はみんながやりたがらないので喜んだ。クロは「警備をする人間」は疑われにくい気がした。そしてエレベーターを管理するだけの仕事ならほとんどヒトとかかわらないし昼間は寝ているから人目につかないだろうと。おおきな都市の地図が描かれたデジタル制御の電光掲示板。無数の青いランプが並んでいる。そこの色が赤に変わったり点滅したらチェックをして状況を上司に報告する。エレベーターの非常用の電話が鳴れば出る。もう半月ぐらいたつけれどランプの色が変わったのが1度だけ。子供のイタズラだった。
勤務が終わると会社のシャワーを浴びて帰る。コンビニでタバコと食料を買う。まだ街は眠りこけている。
クロはアパートの窓から朝焼けを身ながらエサを食べる。不意に実家のネコを抱きしめたいと想う。
相変わらず「やりたいこと」は見つからなかったけれど「やらなければならないこと」は決まった。
それは「捕まらないこと」だ。クロはその「義務」がなんだか悪くないないし自分に相応しいと想った。
罪の意識はない。
だってさ。断りもなく抱きついてきた下品な酔っぱらいのアタマをヘルメットで殴っただけだよ。
誰だってそうするさ。な。想像してみろよ。仕事が終わって風呂に入った。
まだ暑いから半裸でくつろいでいた。寝ようと想っていたらノックがした。
酔っぱらいが勝手に上がり込んでいきなり抱きついてキスしてきた。
「今夜は遅いから」なんて言ったら「じゃあいつならいいの?」ってなる。
「ノー」というコトバは酔っぱらいには理解が出来ない。こういう時は暴力が効率がいい。
なあ。オマエならどうする?黙ってヤラせて昇進するか?それもひとつの「生き方」だな。
オレは大嫌いだけれど認めるよ。
だんだん空は明るくなってくる。まだ月は名残惜しそうに薄く光っている。クロの吐き出したタバコのけむりはやっと出口が見つかったタマシイのように窓からそっと外へ出て行く。クロは作業着のまま布団にもぐった。
4 嘔吐/ダチュラ/ネクタイ
シロは冷蔵庫のモノがなくなるとサングラスをかけて出来るだけ胸の目立たない服を着てスーパーマーケットに買い物にいく。帰りは駅前のコーヒーショップに寄る。サングラスを外して文庫本を取り出す。でもたいていはひとくち飲んだだけで店を出てしまう。まずBGMが気に入らない。テレビと亭主の悪口を言い合う中年女性たちの髪型とカップの持ち方とニオイに耐えられない。ヘンテコな口調の店員のコトバ。強すぎるエアコン。そして今日もネクタイを締めたオトコに声をかけられる。
「お姉さん。隣いいですか?ここの不味いコーヒーも美人の隣なら少しは美味しくなる。近所ですか?
ボクは営業なんですけれどお姉さんがもし午後ヒマならサボっちゃおうかな」
シロは寒気を感じる。気持ちが悪い。息苦しい。外へ出る。礼儀知らずの街並み。
街を歩く誰もが街に飼いならされた忠実なエキストラのようだ。
空き缶や落ち葉の吹きだまったフェンスのところにしゃがみ込んでシロは嘔吐する。シロはコーヒーショップで声をかけて来たオトコにコーヒーカップを投げつけたらどんなにスッキリするだろうと想いそれを「実行できなかった自分」を恥じた。
シロは家から出なくなった。弁護士に電話をして食品類は配達してもらうようにお願いした。パパの書斎にあったタバコを吸ってみた。少しむせたけれどなんだか強くなれるような気がした。「シロ。1mgなんか吸うオトコとは付合ってはダメだよ。健康のために軽いタバコに変えるなんてバカげている。健康のためならばやめればいいんだ。パパのタバコはロングピース。長い平和。タールは21mg。強いタバコだけれどパパはこれがいちばん好きなんだ」
パパ。どうして死んでしまったの?わたしはとても寂しいです。クリスマスにパパが連れていってくれた映画は題名は忘れてしまったけれどとても楽しかった。ポップコーンが甘くて美味しかった。パパのにおいが大好きなの。だからたまにパパの洋服ダンスにの中に入るの。暗くて静かでいい匂いで落ち着くの。でもパパに文句もあるの。ねえ。どうしてあんなオンナと結婚したの?あのオンナは嫉妬深くてたぶんパパの財産目当てだわ。あのオンナだけ死んじゃえばよかったのに。
シロは起きている時間はパパの部屋にある本を片っ端から読んでいった。異邦人。日本人の起源。ドグラマグラ。クレオパトラの財宝。嘔吐。虚構船団。バイオリズムと血液型。我が輩は猫である。熊を放つ。地獄の黙示録。箱男。人間失格。脳は語る。家畜人ヤプー。黒猫物語。アレンギンズバーグ詩集。屋根裏の散歩者。時計仕掛けのオレンジ。エッシャーに魅せられた男達。麻雀放浪記。泥棒日記。誰がジョンレノンを殺したか。気まぐれロボット。推定無罪。レインブラック異聞録。アグニの子供。虹の理論。ライ麦畑でつかまえて。星の王子様。シロは本を読むのがとても好きになった。本を読んでいる時間はなにも考えずにすんだ。特に村上春樹の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と村上龍の「コインロッカーベイビーズ」が大好きで何十回も読んだ。このアネモネって娘の気持ちがよくわかる。キクみたいなヒトに逢ってみたい。図書館の娘も博士の娘も素敵。わたしも「ココロ」を探してもらいたい。ダチュラを撒いてこの世界を崩壊させるなんてすごくいい。音のない世界。すごくいい。わたしに足りないのは相棒の恋人だわ。強くて悪賢いネクタイの似合わないオトコ。助けてよ。お金ならあるの。ダチュラはどこで売っているの?新宿?泳ぐのは苦手だわ。水着なんて。
それからシロは配達される食品類の段ボールを隅から隅までチェックするようになった。
この箱の中に恋人がラッピングされているかもしれないわ。
月に2度ほど様子を見に来る弁護士はすぐにシロの異変に気がついた。
気晴らしにと彼女を精神科に車で連れて行った。
「家族の死やオーディションのこともあるでしょうがそれはたぶんキッカケです。
以前からなにか精神的に問題があったと想います。
初診なので病名などは特定できませんが確実に精神を病んでいます」
それから定期的に病院へ行くようになった。シロは嫌がらなかった。むしろ愉しみにしているようだった。
そしてシロはひとりで病院に通うようになった。
ここの待合室にいるヒトビトはみんな静かでキットよいお家の方々がばっかり。待合室の隅に設置された喫煙所でタバコを吸う。ここで吸うピースがいちばん美味しいわ。七階の窓から商事会社のビルがみえる。みんな行儀よくパソコンの前に並んで退屈そう。オンナの人が立ち上がった。紙を機械に入れている。眼鏡のネクタイのオトコが彼女をみてる。いやらしい目。あのオトコの人はずっと電話をしている。どうして電話なのに頭をペコペコしているのかしら?ここの病院に来るべきよ。ここの病院は素敵よ。誰もわたしの胸や顔のことを言わないの。みんな静かよ。いま隣でタバコを吸っているおじいさんは手が震えているけれど親切なの。ライターを忘れて困っていたら火を貸してくれたの。このおじいさんは奥さんに逃げられたんだって。わたしよりずっと1000倍も綺麗で美人でフェラチオも料理もすごく上手だったけど浮気してたんだって。わたしは料理を勉強しなくちゃ。パパは料理が上手だったから。ママよりもずっと。書斎に料理の本もあったわ。フェラチオってなにかしら。百科事典に載ってるかしら。このおじいさんはきっとお風呂に入ってないと想う。わたしがお風呂に入っていなかったときとおんなじ匂いだもの。若くてガラスの歯ブラシみたいな女の子はね。いじめられたんだって。先生にもいじめられたっていうの。だからわたしは学校に行かなくてパパありごがとうってやっぱりパパは素敵なヒト。太ったおばさんは外国のタバコを吸っている。パチンコに負けて悔しいんだって。パチンコが大好きで中毒なんだって。この前は20万円買ったから恋人と焼き肉を食べたんだって。パチンコをしている時はなにも考えないから楽しいんだって。わたしはパチンコをしらないけれど踊っていた時は楽しかったわ。このオンナの人はたぶんオペラ歌手になりたかったんだわ。声がとっても大きいしカラダが立派で貫禄がある。でもきっと誰かがオーディションで不合格にしたんだわ。
だってこのヒトのバストはすごくおおきいんだもの。
ってかんじか。
まあ習作にしちゃあこんなもんか。
もう19時か。
小説ってはじめてやったけどおもしれーな。
ハマりそう。
セックスシーンは避けて通れぬだろうな。
まあクロの発情待ちだな。
あ。
そっか。
次を「グレーの場合」にすれば。
動くな。
よし。
5 グレイの場合
グレイは中堅の警備会社に勤める中年の冴えないオトコ。勤めはじめた頃にセキュリティシステムの営業でたまたま友人に代議士がいてそのツナガリでラッキーな営業成績をあげた功労で係長ではあるがあとはただ飼い殺しであることは本人含めて全員が知っている。
定時に帰宅する。ただいまと静かにグレイは言うが誰も返事がない。妻は通信販売のダイエットマシーンをカラダに巻きタバコを吸いながら電話で話している。息子は大音量でネットゲームをしている。食卓にはカゴが伏せてありグレイの夕食が用意されている。カゴをとるとカップヌードルカレーと梅干しのおにぎりがひとつ。もちろん誰からも返事がないのだけれどグレイは静かに「タバコ買ってくる」と外へ出る。偶然団地の階段ですれ違った娘に「マイセンワンカートンよろしく」と言われグレイは静かにわかったと答えた。
ファミリーマートの看板が誘蛾灯のようだ。
コンビニは不良が溜まるから若者にだけ反応する高周波数の電波が出ていて
それを聞くと若者は頭が痛くなって長居できないというウワサは本当なのだろうか。
グレイはタバコとジッポのオイルを買った。帰り道は少し遠回りをした。どこかの家から魚を焼くいいニオイがする。グレイは激しい食欲を感じる。焦げたにおい。胃がぎゅっと。油の跳ねる音。グレイはバラエティ番組の笑い声が聞こえるアパートの隣にある木造の家を選んだ。そっとアルミの門を開けてジッポのオイルを木の部分に流す。ふたつ缶が空になって火をつけてグレイは帰宅してカップヌードルを食べ迷ったけれどおにぎりは食べずに風呂に入り眠った。
グレイは朝が好きだ。家族は寝ているから静かだ。米を炊き魚を焼き家族の味噌汁を作り昨夜の放火で全焼した火災現場特有の科学的で生々しいにおいを感じながら駅へむかった。改札を入ってすぐ左側にある「緑川駅ふれあい文庫」から今日も漫画を選んび電車に乗った。グレイは満員電車が嫌いだし家も好きではないから早めに家を出て会社の近くのドトールでハイライトを吸いながらぼんやりとタイムカードまでを過ごす。選んだ漫画は想っていたよりも面白くて明日も続きを借りようと少しだけ気分がよくなった。漫画の中でおじいさんが少年に「オセロには白と黒があるけれどそれは裏と表じゃないよ。いい悪いじゃない。光と闇でもない」と語る場面で不意にすべての景色が止まってしまったような気分になった。
いままでの自分の人生というモノがまったくなにもないからっぽのなんのアクセントもトッピングもない特徴もない灰色でその他大勢烏合の衆でありあともうじき死んでしまうし自分が死んだところでまったく誰にも世界にも影響がなく自分がただの「無意味そのものという存在であるという事実」に気がついていたのだが知らんぷりをしていた仮面がマスカレードがペルソナが剥がれて落ちてそれは足首にキツく何重にも巻かれたガムテープをベリベリベリとゆっくりと剥がすような物理的な痛みがあり小学校2年生の時に父親の大事な洋服を汚して殴られて物置に丸3日閉じ込められて以来おおきなおおきな声を上げて泣いた。
もしエスプレッソを頼んでいたら。
きっとカップは涙であふれてしまうだろう。
あふれたところで。
アルバイトのウエイトレスがあまり清潔そうではない雑巾で
「帰ったらそっこー風呂入ろ」と想いながら拭き取られるだけであるが。
携帯電話のアラームが鳴るとグレイの涙は止まりプログラム通りに会社へ向かう。無意味な涙をペーパーで拭き取って灰皿といっしょにトレイに載せて返却口に静かに置いて会社へ向かう。そして今日もグレイのタイムカードには「8:45」と刻印される。帰りは必ず「17:08」である。あまりにもそれが正確なためグレイは一部の女子社員から「時計オヤジ」と呼ばれているがグレイは知らない。
ふむ。
いいと想う。
さてと。
ちょいとヤツらの「自意識」にまかせて
ちょっとオレは休憩をしよう。
きゅーけー終わり。
カップヌードルカレー喰った。
探したけれどおにぎりはなかった。
1000円のピースを吸いながらっと。
6 エレベーター/希少種の化石/バリミウ・イーベル
診察を終えるとシロはエレベーターに乗った。ドアが閉じかけた時にオトコが走ってきたのでシロは「開ボタン」を押した。オトコはいきなりシロに抱きついて胸をわしづかみにした。シロは悲鳴をあげた。絶叫した。なにがなんだかわからなくて叫びながらボタンを押しまくった。オトコは逃げてドアは静かに閉じた。
クロの会社のブザーが鳴った。
「もしもし。警備担当のクロと申します。
どうなさいましたか?」
しかし悲鳴しか聴こえない。
警察に連絡するべきだろうがそれはまずい。
ビルがすぐ会社の近くなのでクロは車で現場に向かった。エレベーターに人影はなく非常口の階段にさっき散ったばかりの胡蝶蘭のような真っ白な少女がうずくまっている。クロは声をかけた。
「大丈夫ですか?
警備会社のクロです。アナタが非常ボタンを?」
シロはおおきな瞳から涙を流しじっとクロを見つめている。
なんだ。吸い込まれそうだ。なんて綺麗なんだろう。つくりものなんじゃないのか?
クロの身体中の血が沸騰し逆流し大麻よりセックスより激しい恍惚。クロの全身の細胞がこの真っ白なオンナを求めている。
「車で来ています。送ります」
シロは動かない。
一度だけまばたきをしただけだ。
クロは辛抱強く声をかける。
「ねえ。怖いの?オレは大丈夫だよ」といいながらタバコをくわえると
シロが「ダメ」とちいさくキッパリと言った。
「え?ダメってなにが?」
「メンソールをニンゲンは吸ってはダメ」
シロはロングピースを差し出した。
「ねえ。パチンコってなあに?」
「ああ。ギャンブルだ。バカがやるゲーム」
「フェラチオって?」
「説明するもんじゃない。
うまいタバコだな。これからこれにしようかな」
「さっき変なオトコに抱きつかれたの。
そんで胸をもまれたの」
「マジかよ」
「うん。でもね。怖かったよ。
ボタンばたばたして。
でもね。急に戻ったの」
「戻った?」
「そう。
わたしはもう狂ってない。
モトに戻ったの」
「え?1行もわかんないんだけど」
「ねえ。わたしの家にきて。
お金はあるの。そんなネクタイは捨てて」
シロは笑った。
正確に描写すればさっきまで夜だった世界のはじっこから
太陽がのぼりその圧倒的な光ですべてをさらけ出すように瞳が輝き
バリミウ・イーベルの名画「天使のいる点景」よりも
ずっと鮮やかなピンク色の唇が笑顔のカタチにカーブした。
そして真っ白な肌が薄っすらと上気した。
クロはちょっとした奇跡を見たよう感じた。
このオンナなにいってるかわからないけれどオレはしばらくこのオンナの言う通りにやってみよう。これはあらかじめ用意されたテーブルののオレの席のオレのためだけの繊細な日本料理だ。ゆっくりと味わいながら食べてみたい。それに。いい加減ひとりは寂しくなってきたし。しかし綺麗だな。テレビのヤツよりぜんぜん美しいよな。
「ねえ」とシロが短く呼んだ。
「なに?」
「アナタ。ヒト殺したでしょ」
タバコの灰が落ちた。
大型バイクが猛スピードで走る音がきこえる。
クロは通報されるかもしれないという想いよりもなぜか「秘密をわけあえる相手が見つかった」ような安堵感が強くすべてが許された気がした。
「うん」
「いいの。
それはいいの。
正しいかどうかはわからない。
でこぼこ。でことぼこ。白と黒。空と海。
どっちがいいも悪いもないの。
そんなことよりアナタにお願いがあるの?」
「なんだ?」
「わたしの恋人になってください」
クロは車にシロを乗せてシロの家に向かった。
家に着くとふたりは何も喋らずにいっしょにシャワーを浴びた。クロの勃起は固く完璧でシロのクチビルはそのために存在するかのようにクロの勃起を深くしゃぶり続ける。舌先も指先もすべて独立したイキモノのようにゆっくりと勃起のすべてを舐める。我慢できなくなったクロはそのままシロをベッドに抱きかかえシロの濡れたた処女に暴力的に勃起を挿入する。激しく腰を動かす。クロの浅黒い筋肉がしなる。シロはさっきよりもおおきくそして甘く絶叫する。クロは腰をふり奥までつき欲望のままシャウトする。もっと奥へもっと奥へ。ぶち壊せ。飛べ!いけ!最高だぜ。クロはシロの両手を押さえつけクチビルにむさぼりつく。
そしてクロは果てる。シロは優雅に起き上がり髪を少し直してふたたびクチビルでクロを愛撫する。お互いの「欠落」を埋めるようにずっとずっと我慢していた慢性的なさびしさを共有した。「昔のこと」を綺麗さっぱり愛液で流し落とすまでただ水だけを口移しで飲みながら抱き合った。ふたりには脱ぎ捨てるモノなんてもうなにひとつなかった。いままでのすべてが「この瞬間のためにある」とふたりは想った。
最後にシャワーを浴びて温かい風呂の中でお揃いの指輪が欲しいとクロが言ってシロも賛成だと言ってすっかりカラダを乾かしてつがいで発見された希少種の化石のように寄り添って眠った。
翌日。クロが目覚めると世界は変わっていた。
シロはさらっとしたエスニック柄のスカートをはき
胸のラインがはっきりとわかるシャツを着ていた。
下着はつけていない。
クロはあの日以来悩まされいた悪夢をみなかった。
キッチンで美しい女がコーヒーを煎れている。
ときどきオレを見て笑いながらなにか言ってる。
「シロ!ちょっと来て!」とクロは大きく呼んだ。
タバコに火をつけながら
「なあ。ゆうべオレたちだきあったよな。
マボロシじゃないよな。
オレさ。工場長殺してから見ていた怖い夢。
ゆうべみなかったよ」と言った。
「抱き合ったなんてモンじゃないでしょ」
「そんでさ。オレちょっとわかんないんだけどさ。
ノーブラのオマエ見たら発情した」
シロは静かに髪を束ね
微笑みながらシャツを脱ぐ。
ずいぶん長く眠ったんだな。もう夕方になる。
クロは半分眠りながら射精した。
夜はシロの父親の書斎で過ごした。
「この本棚はわたしが読んだ本。こっちはまだ」
「ふーん」
「クロは本は読まないの?」
「そうだなあ」クロは書斎を見渡し
左の棚の上から1冊ずつ丁寧に眺めたまに本を5cmぐらい抜き出す。
「この抜いたヤツはぜんぶ読んだ」
「ぜんぶ?」
「うん」
「すごい。わたしの何十倍だ」
「どうだった?」
「オマエのパパのセンスは最高だな」
タクシーを呼んでステーキを食べに出かけた。サイズがピッタリだったのでクロはパパのスーツを着てシロは表彰式のときにと用意してあったドレスに着替えた。夜の街を歩くふたりは縄文時代に迷い込んだコギャルの携帯電話のように目立った。真っ白な胸の豊かな美人と浅黒くてひょろっとしたギャングマンのようなつり目のオトコ。ファーストフード居酒屋すべての巨大チェーン店。欲望と消費と絶望の歓楽街。風俗店の呼び込み。チラシを配る黒人。酔いつぶれて放射能まみれのアスファルトにうずくまる学生服のオトコ。占い師。ギターを弾きながら叫ぶ少年。
「ねえクロ。あの音楽ってなに?
気持ちが悪いの。
わたしはバレーの音楽しか知らなくて
パパがビートルズが好きだから興味はあるけど
あのヒトたちの声はみんなおんなじ」
「そっか。
オレはね。音楽はロックだけは知ってる。
トモダチもね。バンドやってるんだ。ご機嫌だよ。
ライブいこうぜ。よし。あとでCD買おう。タワーレコードあったな」
クロは素顔で歩くことがまったく怖くなかった。シロを抱いてからすべてが変わって自分の素顔も変わった。もう「前のクロ」じゃないから別人だからオレは逃げる意味がない。それに。シロと誓ったんだ。便所以外はすべていっしょに行動するって。シロがいれば問題はないんだ。
「シロ。
なんでオレがヒト殺したのわかったの?」
「だってヒトを殺したことがあるヒトの目をしてたから」
「なんだそれ。そんな目ってあんのかよ?」
「パパ。わたしのパパと同じ目の曇りがあるの」
「パパって。殺し屋とか戦争でやったとかそういうこと」
「うん」
「どっち?」
「殺し屋」
「マジで」
「うん」
「だから金持ちなの?」
「うん」
「絶対に絶対にマジでホントの殺し屋?」
「うん」
「あのさ。証拠って言うか。
嘘だとは想わないんだけど信じ込めないというかよ」
「手伝ったことがあるの」
「マジで?」
「うん」
「あのさ。
オレ。ピンチ?」
「逆」
「ラッキーなのか?」
「ちょっと違うなあ」
「なによ」
「ちょーだいラッキーです」
「シロ」
「はい」
「飯あとでいいか?」
「はい」
ふたりの入ったラブホテルの最上階の部屋にはグランドピアノがある。バブル期に設置されどうにもこうにもならなくなった代物。週末のラブホテルは安い部屋から埋まっていく。ふたりは最上階の部屋を選んだ。クロは窓を開け路上に向かって叫びながら小便をした。シロはデジタルカメラでそれを撮影した。帰る理由がないことに気がついたふたりは3日間ハダカでずっと部屋の中にいた。たいていのことは容易くカネで解決できるからみんなカネを欲しがるのだろうか?
暗闇の中でふたりはお互いの過去を順番に話していった。想いついたのはクロで名づけたのシロでふたりはその儀式を「ブラックマジカルミステリーツアー」と呼んでいた。東急ハンズで買ったロウソクに火を灯す。そして順番に「過去」を話す。そしてちいさなナイフで肌を薄く裂いて血を舐める。それを繰り返していったらオレたちには未来しかなくなるんだと言うのがクロの口癖になっていった。
7 グレイの変身/風俗嬢の恋/メルセデスベンツ
よし。
ちょうど22時だ。
腹が減ったな。
あーたのしかった。
続きは。
推敲を重ねた上
ある日ある場所で発表するかもよ。
じゃあね。